「リナちゃんのひ・み・つ」2ページ目♪  

気がつくとあたしは自分の部屋の ベッドにねていた。
めのまえに 心配そうなガウリィの顔があった。
「気がついたか、いま医者をよんでるから」
「医者?ちょっと、昨日のお酒がのこってるだけなのに、おおげさよ!断って!」
自分でもつい きつい口調でいって後悔した。う、ガウリイが訝しげな顔をしてる。
ま、まずい。あたしが倒れた原因は見当がついてる。そして、できることなら
こいつにだけはそれを知られたくはないのに。
「べ、べつにちょっとした二日酔いじゃない。そんな、心配するほどのことじゃ....」
「おまえが食欲無いってのは、充分心配なことだとおもうんだが?」
「う、でも、とにかく、あたしはどこもわるいとこなんてない!だから!」
そのとき、ドアのほうからにこやかな声がかかった。
「でも、もうきちゃってますし、健康診断だとでもおもってかかっちゃってください」
「!」
「あ、ノックしたらそのままドアがあいちゃったんです。おじゃまでした?」
しまった、まだ鍵がこわれたままだあぁ。
おもわず、身体をおこしかけたあたしの肩をおさえつけるようにするガウリィ。
声だけはのんびりと
「まだ横になっとくほうがいいとおもうぞ」
う、に、にげらんない。
「わかったわよ。おとなしく 診察をうけりゃいいんでしょ!」
「ああ、そのほうがいい。」
「いやー、ほんとになかがいいですねぇ。」
にこにこ笑う顔がどこぞの神官を連想させる。こ、この医者、いつかぜぇーったいに
ファイヤーボウルのいっぱつもかましちゃる。
「はい、それじゃ、ちょっと上着のボタンをはずしてください」
往診かばんから、聴診器をだしながら ごく当然といった感じでいわれ
あたしは、しぶしぶ服のボタンに手をかけて、ガウリィがいかにも心配そうに
こっちをのぞいているのにきづいた。
「ガウリィ、ちょっとでてってよ!」
「なんでだ?」
「!?なんでって、診察するっていってんでしょうが!」
「だから、俺もいたほうがいいんじゃないか?」
「こ、このくらげ〜!」
おもわず、枕を投げつけるけど当然うけとめられる。そのとき
「ご心配なのはわかりますが、薬を飲むのにしたでおかみさんに水を一杯もらって
きていただけませんか?」
そのひとことで、ガウリィがあたしの枕をなおし、あたしの頭をかるくなでながら
「おとなしく診察されとけよ」と、でていった。
「よけいなお世話よ。もう、子供あつかいしないでったら!」
その背中におもわず、顔を赤くして、どなってしまった。
そんなあたしをみて、なぜか 医者のやつが笑顔を浮かべている。いや
これが地顔かもしんないけど。

診察もおわり、医者がきかれたくなかったことをきいてきた。
「ところで、昨日うっかり聞き忘れてたんですが、なにか毎日飲んでらっしゃった
お薬はありますかぁ?」
その、質問につい、顔をそらして、あたしは小声でとある薬の名をくちにする。
「あ、やっぱり。前にもいらっしゃったんですよ。麗和浄(ディクリアリィ)の
あと、常用してる薬の効果がきれて、副作用だけ出ちゃった患者さん。で、医者と
してなぜあんな副作用のしられてる薬を、あなたのような知識のある魔道士が使われ
たのかなぁとおもって。」
「1流の魔道士なら長く使う事はあまりない。て、言いたいんでしょ。
そんなことはわかってたわ。.......しかたなかったのよ。事件が立て続け
だったから。魔法がつかえなくなるってのは、致命的だったし。」

「それは、俺の剣をみつけるのに無理をしたってことか?」
「ガウリイ!」
いつのまにか、戸口に水差しをもったガウリイがたっている。
彼のこんなこわい顔は、初めてだ。お、怒ってる?!
う、大股ですごいいきおいでちかづいてくる。どん、と乱暴に水差しをナイトテーブルに
おいて、その手であたしの肩をつかんだ。
「ここんとこ、なんか調子がわるそうだとはおもってたが、その薬のせいか!」
「そんなんじゃ........」
「リナ」
ガウリィがめったにない、真剣な表情であたしをみつめてる。綺麗な青い瞳
にうかんでるものがそれ以上のあたしのことばを奪ってしまう。
肩にかかるガウリイの手がすごく重い。
「リナ、いまの話じゃ、魔法を使えるようにするためだけに、おまえが危ない
薬を飲んでたって聞こえたんだが」
「.......」
「答えろ!リナ!」
私は、うつむいたまま唇を噛んだ。確かにそのとおり、あの日がこないように薬を
飲んでた。でも、そう答えちゃったらガウリィを傷つける。.....もう遅いかもしれないけ
ど。
そのとき、意外な助けがきた。
「そりゃ、男性にはいえませんよぉ。いちおう、経口避妊薬ですから。」
・・・・・・・・あんまり、助けになんなかったかもしれない。
「へ?」
ガウリィの表情が真剣なものから、いつもの表情に疑問符をうかべたものに変わる。
「ですからぁ、け・い・こ・う・ひ・に・ん・や・く!ですよ。」
「なんどもくりかえすんじゃなぁーい!」
真っ赤になって怒鳴り、一瞬 力のぬけたガウリイの腕を振り払う。手に届くかぎりのものを投げて、二人を部屋からおいだし、あたしは毛布をひっかぶる。顔があつい。
ううぅ、だからいいたくなかったんだぁ。

しばらくして、部屋にだれかがはいってくる気配がした。
「リナ、おきてんだろ?」
あたしが、どうしよう、なんてこたえようとまよってるあいだにベッドに
どんどん近寄ってくる。
「リナ」
すぐそばでささやくようによばれると同時に、すくいあげられた。
そして、あたしはくるまっているもうふごと、ガウリイの腕の中にいた。
「??!!!」
ほんの一瞬のできごとで、なにがおこったのか理解するまえに彼が話し出す。
「さっきは、すまなかった。おまえにずいぶん無理させてたんだとおもったら
つい情けなくなっちまって。こんなんじゃ、保護者失格だな。」
「.........」
「でも、これだけはたのむ。自分の身体を傷つけるのだけはやめてくれ。
おまえの無茶にはどこまででも付き合うが、こんなのだけはがまんできん。
約束してくれ、もう自分で自分の身体を傷つけるようなことだけはしないと。」
「........」
「リナ?」
「うん。約束する」
自分でも、思いがけないほど素直に答えられた。

そのとき、ノックのおとがした。
「すみません。さっき処方した薬をもってきたんですがぁ。」
げ、またあいつだ。
う、こんなとこみられたら。(汗)あたしはあわててガウリイの腕とかぶっていた
毛布をふりはらう。うわ、目の前にガウリイの顔!
でも よかった、微笑んでる。いつもの心の暖かくなるような笑顔で。

にこめの医者がコップにいれたものは底無し沼の色をしていた。
「これ なに?」
「いやだなぁ、もちろんお薬ですよ。みためはこんなでも、よくきくんですから」
にこにこ笑うそいつの顔があたしにそれを、飲めといっている。
わかったわよ、飲みゃいいんでしょ。そして、いっきにそれを流しいれる!
んで、こころから、後悔した。う、まづい。とことん、まづい。
たとえていうなら、すりつぶしたほうれん草をひなたに2、3日おいといたもの.......
みずさし1杯分水をのんだけど、口のなかからその味はなかなか消えなかった。(涙)
この医者 なんて凶悪なもんつくるのよ!あたしがこころのなかで毒づくのを
しってかしらずか、そいつは
「できればなにかめしあがったほうがいいですよ」
といいだした。ガウリイがあたしをのぞきこむように尋ねる。
「どうだ?落ち着いたか?気分は?」
そんなにアップでせまんないでよ!つい、あせって大きな声がでるじゃない。
「そんなにすぐにきくわきゃないでしょうが!でも、このくちんなかの味を
なんかでけさなかったら きもちわるいし。食堂にいくわ。
あー、それとなにしてんのよ!ブーツぐらい自分ではくから、もいいってば!」
ブーツをはかそうとするガウリイをおしのける。
あたしの自称保護者どのは、とうぶん過保護になりそうだった。

帰る医者となぜか いっしょになって食堂にむかいながら、ガウリイが彼に尋ねる。
「あ、そうだ さっきあんたがいってた けいこうひにんやくってなんだ?」
ごき。つんのめって、壁にはりつきながら、あたしはくちをひらきそうになった
医者をにらみつけて黙らせる。
「ガ・ウ・リ・イ、こんどその言葉、ひとまえでいったら、いや、ひとことでも口にした
その瞬間 問答無用でファイヤーボールぶつける。」
あたしが、こめかみをひきつらせながら言った言葉で、ガウリィは懸命にも
口をとざした。
そうか、あの日のこない危ない薬とだけおもってたのか。なぜか、ほっ、として
心が軽くなる。あ、なんかお腹空いてきちゃった。
「さ、ごはん、ごはん(ルン)食べ損ねた分も食べなくちゃ。」

食堂へ、はずむようなあしどりでむかうリナをガウリイが苦笑をうかべてみつめながら、つぶやいた。
「そんなにいやなら、いまはきがつかなかったことにしといてやるよ。」
それをきいたのは、帰ろうとして彼らに背をむけた医者だけだったが、
「患者とその保護者のプライバシーはまもらなければね。」
と、にっこり笑って唇に人差し指をあてた。


追記;あたしとガウリイのお久しぶりのお食事バトルは、再開されたのだが
やっぱりというか なんというか、あたしの飲み物は水だけとなり、おまけ
にあの すさまじくまづい薬は 毎食後で しかも 1週間分もあったのだった。(涙)


===================================おしまい♪

あとがき

これは、リナちゃんに原作1巻からなんであの日がこないのかな、とか考えてておもいついたものです。こんなののっけてくださって、アキはしあわせものです。そーら様、感謝!

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