「雪遊び」かわいい〜〜〜!


秘やかな夜。
暖かいベットでぬくぬくと眠る子供がひとり。
 
カチャッ
 
「エア、エーア、お・き・て」。
「うーん、おっきすんのやーよ」。
「すっごーいもの見せてあげるから!」
「しゅごいもの?なーに、まぁーま」。
 
キョトンと不思議そうに母親を見上げる。
 
「寝る子は育つ。よーく寝て、あたしに負けないくらいの
美少女になるんだぞ!」
毎夜、おまじないのように掛けられる母親の言葉。
決して起こされることなどなかったのに。
 
「はい、ばんざーい」。
「ばんがーい」。
 
ズボッとセーターをかぶせ、その上にモコモコの真っ白なコート。
「はい、次はこれ」。
パジャマの上にこれまた真っ白なズボンをはかせる。
そして大きな耳が付いた帽子。
「最後にこれをかぶせてっと。おおーっ、エアちゃんかわいいぞ!
どっから見てもうさぎさんだ。」
 
「おでかけ、おでかけ?」
近頃外出する度に、母親が気に入って着せている
ウサギさんルックになった娘がたずねる。
「よいしょっと」。
 
母親は子どもを抱き抱え、外へ通じるドアへと向かう。
 
「ほーら、エア見てごらん。真っ白だーー」。
「わー、うわぁーーーー。ゆきだーーー。ゆっきーー
まま、ペンキ屋さんきたのーーー?」。
「ぺんき屋さん来たね。お空もお屋根もみんな真っ白だ」。
 
勢いよく開かれたドアの先は、見渡す限り白く染められた白銀の世界。
空を見上げれば、絶え間なく雪華が舞い降りる。
 
「エア雪降るのとっても楽しみにしてたもんね。こんな大雪めずらしいわよ。
朝になったら人に踏まれて汚れちゃうし、今の内に遊ぼう。
今日だけは特別ね」。
「わーい、あそぼう、あそぼう!」
 
誰もいない雪の上、母と娘は飛びはね、雪を投げ合い、はしゃぎあう。
しばらく戯れていたが、
「エア、道路の上に寝てみようか。普段なら絶対できないもんね」。
そう言うと、いきなり手足を伸ばし、仰向けに雪の上に
ねっころがる。
「エアも、エアも」。
「雪きれいだね。寒いのは大っ嫌いだけど、何か惹かれるのよね」。
 
静かに空を見続ける、真っ赤なコートを着た女性とうさぎさん。その上に
雪は降りかかる。
 
「おい、何やってんだ! お前たち」。
「うきゃーーーーーーーーーーーーーーーっ、ガウリイ!」。
「わぁーーー、ぱぱぁ」。
 
突然、頭上から降ってきた声に驚き、ガバッツと身を起こす二人。
「なんで?明日の朝まで警備だったんじゃないの?」
「ぱぱぁ?」
同時に振り返り、目を見開き、問いかける姿に、若い父親は苦笑する。
 
「大雪になって心配だったからな、警備かわってもらったんだ。
それより何やってんだ?リナ、エア。死ぬぞ、こんなとこで寝てたら」。
 
「遊んでたのよ、ねーーっエア」。
「ねーーっ」。
 
「はぁーーっ、俺はふたりの子どもを持った気分だ」。
「何いってんの、それにあんたはあたしの保護者なんだから
いいじゃない!」
溜息をつく夫に向かい、まだ表情に幼さが残る妻は、笑って答える。
 
「はいはい、一生俺はお前の保護者だよ。
さっ、帰るぞ風邪ひいちまう」。
 
右手でリナの手を握り、左手にエアを抱き上げてガウリイは
暖かい家へと歩く。
 
その姿は、まるで昔話に出てくるシーン。
(こうして3人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。)
 
おしまい
 

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