「月の輝く夜に」その後♪

前書き:こないだ、載せていただいた「月の輝く夜に」でほんとうはリナに
あることをさせたかったんです。それで、つい書いちゃいました!
 

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 月の光を浴びた少女がうっとりとルーンオーブを覗き込んでいる。
神秘的な輝きを放つそれを捧げもち、魅入られたように恍惚とした表情を浮かべてい
る。その姿は月の光のせいか、彼女自身が淡い光を放っているようにみえる。
さながら古代の神殿にたつ巫女のように、月の光から生まれた妖精のように。
いつもその瞳には力強い生命力に溢れているのに、今はその儚さゆえに触れるのさえ
ためらわれる。
言葉を忘れ、ただ、うっとりと彼女を見る幸福感に浸る。
どれぐらいの時間がたったのか。
そんなことさえ忘れ、リナはルーンオーブを見つめ、ガウリイは彼女を見つめてい
た。
ルーンオーブにはそんな二人が映っている。
「……..」
ふとリナが何かを呟いた。
微かな声。たぶんガウリイでなかったら聞こえないほどの。
しかし、彼はその声が聞こえたとたん、目を見開いて呆然とした。
いま彼女は何をいったのか。
言葉は確かにきこえたが、それがあまりに理解をこえて、心の中まで届かない。
ただ、自分の心臓の音だけがはっきりと聞こえる。
ドクン・ドクンとその音だけが頭のなかに響いている。
その時、もう一度リナが呟く。
「アイシテル」
そして彼女は立ち上がり自分の正面に跪く。
「聞こえなかった?」
彼女が月の光の中で微笑みながら問い掛ける。
ガウリイはぼんやりといま、自分はどこにいるのかと考えていた。
これはいったい現実か?
「聞こえた気がするけれど、すまんもう一度いってくれ」
知らない間に声が掠れて、囁くようにいった。
にっこりと彼女が微笑み、ゆっくりと口を開く。
「ガウリイ、愛してる」
「!?」
自分の耳が信じられない。
心臓が飛び出しそうないきおいで打っている。
ドクン・ドクン・ドクンその音に圧倒される。
リナハ ナニヲ イッタンダ
「ガウリイ?」
少女がそっと自分の手をとる。
どうしたんだと、叫びそうになる。
俺もなんだといいたいのに、言葉にできない。
ただ胸が締め付けられそうになる。
呆然と彼女を見つめる。
なにも考えられない。
そんな彼から つと視線をそらし、彼女がいう。
「やっぱりね。ガウリイは違うんだ」
声が震えているように感じるのは多分気のせいではないだろう。
「ガウリイがあたしのことをそういう目でみてないのはしってたの。
ただの保護しなきゃなんない子供だものね。
でもさっき感じた温かい気持ち、それを告白したかった。
迷惑だったら忘れてちょうだい」
知らぬ間にうかんでいた涙をみられないように背を向け
立ち上がろうとした。
ふいに手を引かれ、抱き寄せられ、なにか暖かいもので涙を拭われる。
気がつくと、彼の膝の上に抱えられている。
彼女が泣いている。
それだけでいままで自分を戒めてきたものが断ち切られる。
いつのまにかリナをその腕に抱き、彼女の頬を伝う涙を唇で
拭う自分がいた。
彼女の唇にそっと自分の唇を重ねる。
抱きしめた腕に自然に力が入っていたのか、彼女がみじろぎをする。
腕の力を抜くが解こうとはしない。
「おまえのことを何より大事だと思ってる。
愛してる。そんな言葉だけで、言い表せない。
おまえは俺の全てだ。だから、おまえに言えなかった。
保護者って言葉で自分を縛っておかないといけないほど、
愛しいとおもってる」
いっきに言って、彼女の目をみる。
大きく見開かれた彼女の瞳に、俺が映ってる。
微かに開かれた唇に惹かれるように、口付ける。
そっと、舌で彼女の唇をなぞる。
彼女がはっと、身体を固くするのを可愛いとおもう。
いまはまだこれだけでいい。
ただ啄ばむような口付けだけを繰り返す。
自分の瞳に心の奥底にあるものをうかべないように
そっと彼女を抱きしめた。
いつのまにか、リナの手を離れ転がったルーンオーブ
透き通った輝きの神秘的な球の表面に、月の光に照らされて一つに見える
二人の姿が映しだされている。
 
終わり
 
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あとがき
はい、実は、二人に照れなく「愛してる」といわせたかったんです。
見事に失敗しちゃいましたが。では、どうぞ砂糖を吐いてください。
書き逃げダッシュ!
 

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