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冷凍庫のないワンドアの冷蔵庫を開け、ディルギアは生冷えのビールの缶をひとつ取り出した。迷うことなくプルトップを開ける。 長い一口でそれを煽ると、同じ冷蔵庫からハムの塊とパンを取り出した。
カーテンもかかっていない窓際には、つくりつけの粗末な家具と、古い型の埃だらけのテレビが一つ、上に曲がりくねって、何度も落ちた跡のあるアンテナを載せて置かれていた。 汚れたビニールのクロスがかかったテーブルの上には、数え切れないほどのバドワイザーの空き缶と、不器用に破り開いた包装紙が散乱している。 しなびたポップコーンがいくつか、ピスタチオの殻といっしょに床で昼寝をしていた。 通路の奥、ガスコンロとささやかな電化製品のあるキッチンでは、ヒゲも剃らず、髪も伸ばし放題のいかにもむさ苦しい外見のディルギアが、自分のためだけのサンドイッチを作っていた。 彼は独り暮らしだった。世捨て人だと、自分では考えている。
かかかか・・・・
突然、窓ガラスが震えた。 が、どうせ高速をでかいトラックが走り抜けたのだろう、ディルギアは別段気にも止めなかった。
かたかたかた・・・
また一台。 都会に水でも運んでいるのか。油か。
がたがたがたがたがたがたがたがた!
ディルギアはハムを取り落とした。 地震か!? 思わず裸のままぶら下がる電球を見上げたが、太古の昔からそこで微動だにしていないかのように、コードも電球も1ミリも動いていなかった。 急いで窓に駆けつけたが、砂と埃でほとんど曇りガラスになっているその向こうには、目に見えるような大きな変化はなかった。
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