「Fire cracker」


このお話は、そーらさんが書かれた「変化」の続編です。
まずは、そちらをご覧ください。



街は、誕生祭で盛り上がっていた。今も、大通りから宴の笑い声が聞こえる。
夜風が俺の頬を髪を撫でる。リナが部屋に戻ったのを見届けた後、俺は町の人達に付き合わされ、今まで飲まされていた。酒に強いのも、時には困りごとだな。
俺は、自分の部屋を通り過ぎると、階段を上がり屋上へと出た。
ひんやりとした風にさらされ、誰もいない宿屋の屋上に寝っ転がる。
空には幾千の星が煌き、月がその姿を知らしめるが如く光輝く。
そんな夜空を、俺は眺めていた。
……………リナ。
俺は、一人の少女の名を呟く。
この手に抱きたい女性、誰にも渡したくない少女。狂おしいほどに愛しい女。大切な存在、今の俺のすべて。
あの日俺は、確かにリナを失うのが恐かった。俺の心配を気にしない事が悔しかった。気づいてもらえない想いが痛かった。
「だから、俺はリナにあんな事したのか?」
答えなんか、最初からわかっている質問を自分に問い掛ける。
その通りだ。と、心が答える。
「ふっ。」
可笑しかった。自分が。リナに会うまで、女についてはこんな事考えた事はなかった。

そして、俺は許せなかった、自分が。リナを泣かせた事を。あいつを泣かせるのが俺だった事に。あいつの泣き顔を見たくないと思ったのは俺じゃなかったのか?
そんな時、冷たい風が強く吹き、髪を撫で考え込んでいた俺の頭を幾分冷やしてくれた。
しかし、すぐに風がは止んで、俺は、また思考を巡らす。

あの日から俺は、どうかしている。リナの事しか考えられない。何処にいても、何をしてても。
「俺って、独占欲のかたまりだな。」
またつまらない質問を自分に投げかける。
心の何処かで、こんな俺をせせら笑う俺がいる。欲望に忠実な俺が。
手の中に、リナに触れた感触が蘇る。
そして、どす黒い感情が目を覚ます。俺の中を、火花の様に駆け巡る。
「違う!」
俺は、叫んだ。その声は、夜空に吸い込まれる。
確かに俺はリナが好きだ!愛してる。その想いと、この思いは、違うんだ。
じゃあ、俺はどうしたらいい?どうして欲しい?なぁ、リナ。
ここには居ない人間に尋ねても、答えなんか出るわけない。わかってる。
「俺は、お前が好きなんだよ。リナ。世界中の誰よりも。」
本人を目の前にして、言えない言葉を呟く。
もし、俺を受け入れてくれなかったら……。それが、この言葉を、リナに言うのを躊躇わさせる。
「ふう。」
ため息をはく。最近俺は、一人になると、こんな事を繰り返してる。
そして、毎回最後に出る結論がこれ。↓
『ほんと、リナの鈍感には困ったもんだ。自分の事棚に上げててなんだが、リナも、あの日からは少しは変わるかと思ったが、そんな素振りは見せない。ああ、やっぱり俺は相手にされてないのか?あそこまで強引に迫ったおれの立場は?本気で心配したし、本気で俺はリナのこと欲しいと思ったんだぞ。』

くわぁ〜。もうやめ、考えるのやめ!!なんか、悲しくなってきたなぁ。
「リナぁ。俺の事どう思ってんだぁ。」
言いたくても言えない言葉。情けない顔してんだろうなぁ。俺。
夜風が、また吹いてきた。

「ガウリイ?」
頭の上から声がする。声で誰だかすぐわかった。
「なんだ、リナ。」
俺は顔を声の方に向ける。今の聞かれてなかったよな。
「こんな所でなにやってんの?」
不思議そうな顔で、こっちを見ているリナ。どうやら聞かれて無かったみたいだ。
「うん……ちょっと酔い冷まし。」
「ふ〜ん。」
そう言うと、リナは俺の隣に歩いて来て腰を下ろした。
「今日は、月が奇麗ね。」
嬉しそうに、俺がさっきまで眺めていた空を見上げるリナ。
「ああ。」
見上げるリナの横顔に魅了される。
「どうしたの?」
大きな瞳が、俺を見つめる。月に照らされ、神秘的に輝く。
「あ、なんでもない。」
俺は、思わず顔を背ける。
「ガウリイ、あんた最近変よ。もしかして………。」
ドキ!俺の胸が、大きく脈打つ。
「変な物でも、拾って食べたんでしょ!」
「……………。あのなあ。」
俺は全身の力が抜けていく様な気がした。

「しかし、よくここがわかったな?」
寝っ転がっていた俺は、体を起こしてリナの隣に座り直す。
「あ、さっきお腹空いたんで、宿屋のおっちゃんに食べ物もらいに行ったら、ガウリイが、上に上がっていったって聞いたから。」
まだ、食う気か?よく見たら、その右手に握ってる袋は、食い物か。
「自分の部屋に戻ったとは思わなかったのか?」
「……なんとなく。ここに居るようなきがしたの。」
「そうか。」
「………………。」
下から、曲が流れてくる。宿屋の食堂は、まだ宴が続いてるんだろう。
俺と、リナの会話は、いつのまにか途切れていた。
ん。この曲は、たしかばあちゃんが教えてくれた。曲の一つだ。

♪〜 
If I could king Even for a day
I'd take your queen I'd have it no other way
And our love will Rule In this kingdom we have made
Till then I'd be a fool Wishing for a day

If I can change the world
I'll be the sunlight in your universe
You would think my love was Really something good
Baby If I could change the world

「ふう。」
俺は、歌い終えた。

パチパチパチパチ。
拍手?
「ガウリイ。歌なんか歌えたんだ!」
珍しいものを見たという、目で俺を見るリナ。おいおい、俺だって歌ぐらい歌えるさ。
「なんて歌なの?」
「う〜ん。忘れた。」
「あのねぇ。」
呆れた顔のリナ。
「昔、ばあちゃんに教えてもらった歌だ。」
「ねえ。意味は?」
好奇心の眼で俺を見る。
「意味?ああ…………。」

"もし、王様になれるなら たとえ一日だけでも"
"君を后として迎えるよ 他には考えられないよ。"
"僕たちが築き上げた王国で 二人の愛は支配する"
"それまで僕は愚か者でいるよ そんな日を願い続けて"

"もし世の中を変える事ができるなら"
"君の世界の太陽になる"
"僕の愛が本当にいいものに思えるよ"
"もし世の中を変える事ができるなら"

「て感じだな。」
俺は、リナの方を見た。
「へぇ。でも、なんで、急に歌なんか歌うわけ?」
「酔ってるからな。」
俺は、笑う。ほんとはもう酔いは覚めてる。
「でしょうね。でないと、クラゲ頭のガウリイが、こんなにあたしの知らない歌や意味、言える訳ないもん。」
「おいおい。」
俺は、頭を掻いた。
「あたし、何も知らなかった。男の人のこと。ガウリイの事。」
「……。」
リナは、立ち上がって、屋上の縁に立つ。
「危ないぞ。」
「大丈夫。ガウリイが守ってくれるんでしょ?」
リナは、月の明り背に受ける。その表情が見えなくなる。
「ああ。」
俺は、照れくさくて、ぶっきらぼうに答える。
「そうだよね。ガウリイ男の人だし、そういう事考えてるんだよね。」
「………リナ。」
「実際ショックだった。あんな事されて、でも、最後の………キス。嫌じゃ無かった。」
「…………………。」
「何も知らない子供だったんだなぁって。ガウリイに、いつまでも保護者扱いされてたわけだわ。」
俺と、リナの視線が向き合う。俺は、たまらず、
「なあ。」
声をかける。しかし、それを遮って、
「もう少し、聞いてくれない。」
「わかった。」
俺は、大きくうなずいた。
「だから、あたしは大人になろうと思った。ガウリイに見合うような大人になろうと思った。」
「…………。」
「だから。」
リナの声が途切れる。
「だから?」
おれは、思わず聞き返す
「だから、素直になろうと思うの。自分に、そしてガウリイに。」
「おれに?」
俺は、自分を指差す。
「うん。」
月の明りに負けない笑顔がそこにあった。
リナも、俺と同じように悩んだんだろうか。なにか吹っ切れたような笑顔だった。
それを見た、俺の口が自然に開く。
「リナ。俺は………。」
俺の声は、明るい輝きと大音響にかき消された。
「……花火」
大きな音のため、近くに居るのに、微かにしか聞こえないリナの声。
「ああ。」
静まり返った屋上に、俺の声が響く。
「祭りの最後に、花火が上がるんだってさ。さっき聞いたの……でね。ガウリイと一緒に見たかったんだ。」
顔を赤らめたリナからの、意外な一言。俺の体温が上がる。
こいつわかってんのか?こういう一言が、男に期待を持たせるという事を!!
次々に花火が夜空に開く。
「ガウリイ!」
「なんだ。リナ!」
花火がうるさいので、声が自然と大きくなる。
「でねあたしね。分かったんだ。」
うつむいているリナ。しかし、すぐに顔を上げて俺の方をみる。
「何が?」
「自分の気持ちが。あたしね、ガウリイが………」
真剣な瞳が、俺を捕らえる。俺も口を開く、言う言葉はすでに決まっている。
悩んでいた言葉。今ようやく言える言葉。
「俺はリナが…………。」
お互いの声が、花火の光りと音に吸い込まれる。
「聞こえた?」
リナは、恥ずかしいのか、すぐにうつむく。
「ああ。聞こえた。俺のは?」
「聞こえた。」
「そっか。」
俺は、リナの元に歩み寄ると、リナをそっと抱き寄せた。
俺達は、ただ黙って抱き合い、花火を眺めた。こうする事で、お互いがもっと近づける様な気がしたから。花火は、何度も夜空を明るくする。





「リナ。」
「ガウリイ。」
俺と、リナの唇が重なる。夜空に、最後の花火が花開いた。
静まり返る街。俺は、ゆっくりと、リナから離れる。
「俺の部屋、来ないか。」
おいおい。俺は何言ってんだ。
「………………うん。」
リナが小さくうなずいた。おおおおおい。い、いいのか?
「じゃあ、行こう。」
俺は、リナの肩を抱く。しかし、その手は震えている。
「ガウリイ?」
すこし赤みかがった顔が俺に向けられる。
「どうした。」
「ガウリイの手ってこんなに大きかったんだ。」
リナが言った。何気ない一言が、俺を喜ばせる。
これは夢なのか?それとも俺が酔って、聞き間違ってるのか?
しかし、この手の中の感触が、すべて現実だと教える。

まるで、初めての時のように、胸の鼓動は高鳴っていた。
これからの事を考えたら、緊張しても当然だろ。

「どうぞ。」
俺は、リナの為に扉を開ける。
「ありがとう。」
リナは、なんの躊躇もなく部屋に入る。俺もそれに続く。
俺は、後ろ手で部屋の鍵をかけた。その手が汗ばんでいる。
リナは、あっさりとベットに腰掛ける。
俺の心臓はこれ以上にないほど、高鳴りっぱなしだった。
そして、足早にリナの前に立つ。
「リナ。」
「なに。」
「いいのか?」
「なにが?」
キョトンとするリナ。かわいい。でも、わかってないな。この顔は。
「俺と、その、このまま夜を過ごしても。」
俺は、慎重に言葉を選ぶ。
「えっ?あ、うん。」
うなずくリナ。
「ほんとにいいんだな。」
「これが、すべてじゃないけど、ここから始めたいから。」
それを聞いた俺は、リナの顎を取る。
そしてゆっくり口付けを交わす。
最初は浅く。すぐに深く唇を重ねる。
俺は、リナの口内に舌を送る。リナは、びっくりして眼を見開くが、おずおずと受け入れた。
俺は、たまらなくなって、リナの服に手をかける。
その瞬間、リナが離れた。
「ちょっと待って。」
互いの吐息が触れ合う距離でリナが、制止の言葉を吐く。
「うん?」
俺は、動きを止める。
「前みたいに無理やりしない?」
潤んだ瞳が、俺に問う。
「ああ。お前が嫌だって言えば、いつでもやめるさ。」
「………………うん。」
小さくうなずくリナを見て、俺とリナは、ゆっくりとベットに倒れ込んだ。


眠る横顔。愛しいと思う。
俺の全てを賭けて守り続けたい。
これから起きるすべての事から。
明日からは、何かが変わるのだろうか?
何も変わりはしないのかもしれない。
そして、随分経ってから気がつくんだろう。
心の「変化」を。
変わらない何かと、変わる何かを胸に秘めて人は生きるのだから。



「おはよ。」
ぼやけた視界に眩しい笑顔。
「う、うんん。おはよう。」
俺は寝ぼけ頭で、答えた。
「………。」
リナが俺を覗き込む。
「どうした?」
「あんたが、あんまりうれしそうに寝てるから、起こしたの。」
意地悪く微笑むリナ。
「あのなぁ。」
俺は、リナを抱えると、体を入れ替えた。俺の両腕の下にリナの小さな体がベットに沈む。
日差しに照らされる俺達の体。赤い点が、リナのいたるところに付いている。俺が付けた愛の証。
俺は、そこにもう一度口付ける。ビクッとリナの体が反応する。
「あ、うんんん。やだ。まだ朝なのに。」
リナの非難の声が耳元にする。
「知らないのか?男は朝の方が元気なんだぞ!」
「あ、……ちょっと……。ガウリイのバカ!」
「いいよ。バカでも。」
俺は、ちょっと意地悪く微笑むと、リナを抱きしめた。





おしまい


今回も、妄想暴走してます。(笑)
すみません。そーらさん!
今回は、「変化」の続きのつもりで書いたんですが……。
「変化」のアダルトなイメージぶち壊してます。(爆)
やめときゃよかったですかねぇ。

しかし、すげえ乙女ちっくなリナになっちゃいました。(爆)
ここまで乙女ちっくだと、ガウリイじゃなくても転んでしまいますねぇ。(笑)
しかも、最後までらぶらぶだし(笑)

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リナさいどへ行く♪
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